アクセンチュア、英企業を買収。コンサルティングは「AI実装」の新局面へ
【参考】
アクセンチュア、英新興ファカルティ買収 AI技術をコンサルに活用(画像)
コンサル巨人が「AIの心臓部」を手中に
2026年1月、米コンサルティング大手アクセンチュアは、英国のAI新興企業Faculty(ファカルティ)の買収を発表した。買収額は非公開ながら、市場では約10億ドル(約1,500億円)規模と推測され、英国の非上場AI企業としては過去最大級の取引となる。
Facultyは、政府機関(英NHS等)での高度なAI実装実績に加え、OpenAIやAnthropicの安全性検証を支援するほどの技術力を誇る。この買収により、アクセンチュアは単なる「AIの助言」を行う立場から、自社で高度な意思決定プラットフォームを保有し、企業の基幹業務へ直接組み込む「AIインテグレーター」への進化を決定づけた。
異例のトップ人事:CEOがアクセンチュアのCTOへ
今回の買収で最も業界を驚かせたのは、Facultyの創業者兼CEOであるマーク・ワーナー氏が、アクセンチュアの最高技術責任者(CTO)に就任したことだ。スタートアップのトップを巨大企業の技術戦略の司令塔に据えるこの人事は、全社を挙げて「AIファースト」な組織へ作り替えるという強烈な意思表示である。
加速するアクセンチュアのAI戦略:2026年の展望
Facultyの買収は、アクセンチュアが進める「AIによる再創造(Reinvention)」戦略の極めて重要なピースに過ぎない。直近の動きから見える、同社の次なる布石を分析する。
1. エージェントAIと「AI Refinery™」のグローバル展開
アクセンチュアは現在、NVIDIAとの提携を軸としたプラットフォーム「Accenture AI Refinery」の普及を急いでいる。これは、単にチャットボットを作るのではなく、自律的に判断し業務を完結させる「エージェント型AI」を企業ごとにカスタム構築するものだ。東京を含む世界各地に設置されたエンジニアリングハブを通じ、Facultyの知能をこのプラットフォームに統合することで、より「賢く、安全な」AIエージェントの量産体制を整えている。
2. 「ソブリンAI(主権的AI)」市場の独占
Facultyが持つ政府・公共機関との強固な信頼関係を武器に、アクセンチュアは各国政府が自国インフラ内で管理する「ソブリンAI」の構築支援を強化している。データの機密性が極めて高い公共サービスや製造業において、Facultyの「安全性と透明性」というブランドは、競合他社に対する強力な差別化要因となる。
3. 「物理AI(Physical AI)」への進出
直近ではNVIDIA Omniverseを活用した「フィジカルAIオーケストレーター」の提供も開始した。これにより、デジタル上の知能だけでなく、工場のロボットや物流システムといった物理的な資産をAIで制御する領域にまで踏み込んでいる。
コンサル業界のビジネスモデルを再定義
アクセンチュアのAIシフトは、競合他社に計り知れない影響を与えている。
- 「人月ビジネス」からの決別: コンサルタントの労働時間ではなく、AIによる成果(アウトカム)で稼ぐモデルへの移行。
- AIセーフティが新たな競争軸に: 倫理性や安全性を担保できないAIは導入できないという市場の要求に、Facultyの技術で応える。
- 軍拡競争の激化: 同社は2026年第1四半期にAI関連で巨額の成約を記録。これに対抗すべく、デロイトやマッキンゼーも専門集団の獲得を目的とした買収戦略を迫られている。
今後の展望
アクセンチュアによるFaculty買収は、コンサルティングが「知識の提供」から「知能(AI)の実装」へと完全にシフトしたことを象徴している。今後、日本国内においても、Facultyの技術をベースとした高度な意思決定支援が導入される見通しだ。


