生成AIで淘汰が始まる―デロイトトーマツが示すコンサルの分岐点―
業界最前線で進むコンサル価値の再定義と組織再編
デロイト トーマツ グループは2026年に入り、生成AI時代に対応したサービス強化と組織体制の高度化に向けた動きを本格化させている。
AI技術を活用したコンサルティング提供モデルの刷新、AI関連規制対応支援、そしてシステム開発体制の再編――。これら一連の取り組みは、AI時代におけるコンサルティング価値の再定義と競争優位性の確立を狙ったものだ。
規制対応を自動化するAIエージェントで新たな需要に応える
デロイト トーマツは1月9日、AIサービスに関わる国内外の法令・ガイドライン・規制動向を自動で調査・整理するAIエージェントを開発したと発表した。これは、企業がAI活用を進める上で増大している「規制対応・ガバナンスリスク」を支援するためのものだ。企業にとってAIは単なる効率化ツールではなく、安全性や法令遵守を担保しながら使いこなす必要がある技術へと変わりつつある。こうした背景から、AIの導入支援だけでなく、規制対応に特化したコンサルティング需要が強まることが予想される。
この取り組みは、コンサルティングが提案・計画フェーズに留まらず、実運用とリスク管理支援まで価値提供範囲を拡大していく流れの象徴とも言える。
生成AI時代に適した組織再編で高度なシステム開発体制を構築
1月20日には、生成AI時代のニーズに応えるべく、システム開発体制を高度化する組織再編を2026年12月に実施すると発表した。これは、合同会社デロイト トーマツ アクト(DTakt)の一部事業を吸収分割し、デロイト トーマツ ノード(D.Node)を中心とした体制に移行するものだ。
今回の再編は、生成AIがコーディングだけでなく、上流工程である要件定義やシステム設計領域にも広がっている現実を踏まえ、より高度な設計力・開発力・業界専門性を持つ体制を強化する狙いがある。AIだけでなく、クラウド・ブロックチェーン・IoT・メタバースといったエマージングテック領域を融合したソリューション提供を視野に入れる点も特徴だ。
生産性向上・収益拡大の実例調査が示す日本企業のAI活用傾向
デロイト トーマツは昨年、プライム上場企業を対象にした生成AI活用に関する調査結果を発表している。この調査では、ほぼ全ての企業が生成AI導入を有益と捉え、約半数が全社的に導入していると回答した。
また、社員の生成AI活用割合が高い企業ほど意思決定スピード、生産性の向上、競争優位性の実感、そして収益増加を期待する割合が高いという傾向が見られた。さらに約4割の企業が人員の配置転換を実施しているという結果も示され、生成AI導入が組織運営そのものに影響を与え始めていることが読み取れる。
戦略的AI活用支援と組織変革の両輪で価値を創出
デロイト トーマツの一連の動きは、単なるAI導入支援ではなく、企業の「AI時代の競争戦略そのもの」を支える包括支援へと進化していることを示す。
AI関連規制への対応支援は、企業のガバナンスを強化し、安心してAIをスケールさせる基盤づくりに貢献する。一方、組織再編によるシステム開発体制の高度化は、顧客企業のデジタル変革と複雑化する技術要件に対する実装力を底上げする役割を果たす。
この両輪が噛み合うことで、クライアント企業は単なる「AIツール導入」から抜け出し、AIを経営戦略と事業変革に組み込む支援を受けられるようになる。
コンサル業界全体への示唆
デロイト トーマツの動向は、コンサル業界全体の潮流とも言える。
AIが単なる効率化ツールから、経営上のリスク・規制・競争力の源泉へと進化する中、コンサルタントには高度な専門性とAIの統合運用スキルが求められる時代が到来している。
AIが「前提条件」となる未来において、価値を提供できるコンサルティングファームは、規制・リスク・実装支援・技術設計まで対応できる体制を備えた組織になるだろう。
まとめ
デロイト トーマツが進める生成AI時代の施策は、
- 規制対応から価値提供までの支援範囲拡大
- 高度なシステム開発体制の構築
- 日本企業の生成AI活用実態調査による実証的知見
という三つの軸を中心としている。
これらは単なる内部強化策に留まらず、コンサル業界が直面するAIとの共創時代をリードする戦略的な布石といえる。
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